股関節クリニック

人工股関節全置換術について


1. 適応疾患 ―どのような⼈がこの⼿術を必要としていますか︖

人工股関節全置換術は変形性股関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死症などによって障害された股関節に対し、大腿骨コンポーネント(ステム)と寛骨臼コンポーネント(カップ)を組み合わせて関節を形成し、股関節の機能を回復させる手術です。具体的には、股関節周囲や大腿部(太もも)の痛み、歩き方の異常、股関節の動きが悪いなどの症状で悩まれている方に対して、痛みを和らげ、歩き方や股関節の動きを良くすることがこの手術の目的となります。 


    図1 人工股関節全置換術



2. 手術までの流れと術前検査

 この⼿術を受けることが決まったら、⼿術前の約1ヵ⽉で次のような検査などを⾏います。

● 単純X線、CTなどの画像検査⼿術の計画を⾏うために必要です。


● ⾎液検査、⼼電図検査など―⼿術および⿇酔の準備として必要です。


● ⾃⼰⾎輸⾎―⼿術時にある程度の出⾎が予想される場合には、事前に⾃分の⾎を献⾎と同様の⼿法で採⾎しておくことにより、必要な場合に⾃分の⾎を輸⾎で体内に戻すことができます。他の⼈由来の輸⾎よりも、感染症や⾎液に対する異常な免疫反応などのデメリットが少ないです。貧⾎や体重制限により採⾎できないかたもいますのでご相談ください。


● 術前併診―⿇酔科やリハビリテーション科の先⽣にも、事前に診察していただきます。 また、全⾝⿇酔前には⻭科⼝腔外科の診察で⼝腔内の環境を整えることも⼤事です。元々の持病などがあるかたは、あわせて各専⾨科への診察が必要になることがあります。





3. 入院期間とクリニカルパス

人工股関節全置換術を受けられる方の治療、リハビリテーションの計画(クリニカルパス)があらかじめ決まっています。通常、入院日は手術の前日です。また、手術から7~10日後に退院となります。手術中または手術後に合併症が起こった場合には、入院期間が延長することがあります。



    図2 人工股関節全置換術のクリニカルパス



4. 手術方法について

 当院の最小侵襲手術(さいしょうしんしゅうしゅじゅつ)では、股関節の前方もしくは側方に約7~10cm 程度の皮膚切開を行います(従来の方法に比べ傷は小さくなります)。手術器具の工夫などにより、皮膚の切開を小さくするとともに筋肉をほとんど切らずに人工股関節の手術を行うことが可能になりました。 人工股関節は金属製のステムと骨頭、カップ、骨頭とカップの間に入るライナーの各部品を組み合わせます。ライナーにはポリエチレン、金属、またはセラミックが、骨頭には金属またはセラミックが使用されます。人工股関節全置換術によって、股関節の痛みと動きが良くなり、日常生活動作と生活の質(quality of life)の改善が見込めます。


 図3 人工股関節全置換術  術前と術後の単純X線像



5.     3次元プランニングとナビゲーション・ロボット支援手術(Makoシステム)のメリットについて

 当院では手術前にCTを撮影し、CTデータを基にして3次元的に最も適切と考えられるカップ・ステムの選択、設置位置の計画を行なっています。股関節疾患を抱える方は脚の長さの左右差(脚長差)があることが多く、その脚長差が姿勢や歩き方の異常の原因となっていることがあります。CT データを用いて3次元的にカップやステムを適切な位置への設置を計画することで、脚長差を最小限にすることが可能になります。 
 
 人工関節のコンピュターナビゲーションは、カップやステムを手術前に計画した位置に高い精度で設置するための技術です。また、ロボット支援手術はコンピュターナビゲーションより更に高い精度で人工関節を設置することができます。人工股関節の合併症の一つに脱臼がありますが、カップやステムを適切な位置に設置することにより、脱臼のリスクを減らすことができます。また、カップやステムの設置位置は、人工股関節の耐久年数にも関係します。熟練した医師がコンピュターナビゲーションやロボットを用いることで、長期の安定した人工股関節の寿命と制限のない術後生活が期待できます。


 図4 術前3次元プランニング


 図5 Makoシステム


 図6 Makoシステムを利用したリーミング



6.     術後について

 手術後は点滴・尿の管・血栓予防のポンプ(フットポンプ)・酸素マスクなどの治療に必要なものが体についています。お腹の動きを確認した後に水を飲むことができます。食事は翌朝から開始になります。足の血栓を予防するため、フットポンプや抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)を使用します。フットポンプが終わった後には、ご自身で足首をよく動かすようにしてください。 
 
 手術の翌日に医師・看護師と一緒に車椅子に乗ります。手術した側の下肢(あし)に全体重をかけても大丈夫です。足首の運動は血栓予防のために有効です。移動はリハビリテーションの進み具合に合わせて、車いす→歩行器→杖と変更していきます。一本杖で階段、屋外での歩行ができることが退院の目安になります。



7.     退院後の生活について

 退院後、リハビリテーションで通院する必要はありません。退院後は、自宅の生活、日常生活に慣れていくことがリハビリテーションになります。入院中にリハビリテーションで習った筋力訓練や歩行訓練を自宅でも行ってください。ただし、手術前の筋力が非常に弱い方や、日常動作が著しく制限されている方では、退院後にリハビリテーションに通院したほうが良い場合もありますので、主治医へご相談ください。
 
 職場への復帰時期について、仕事の内容や職場までの通勤手段、通勤時間によっても異なりますが、退院後に自宅の生活に慣れて自信がつけば職場復帰は構いません。また、日常生活が落ち着いてくれば、軽いスポーツは可能となります。具体的にどの程度の激しいスポーツを行ってよいかどうかについては、主治医へご相談ください。



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