入局案内

整形外科医を目指している先生、また将来の進路や入局について検討されている先生へ、教授および医局長からのメッセージです。

整形外科を志す皆さんへ

教授 齋藤 知行

本邦では超高齢社会となり、2009年の人口統計では年少人口の減少と高齢人口の増加によってピラミッドの形態を成さなくなりました。2050年には国民の3人に一人が65歳以上の高齢者となり、全人口における高齢者の割合は30%以上に達すると予測されています。運動器を健全に保つことは、高齢者の生活の質の維持あるいは向上、さらには精神的や内科的併発症を予防するのに重要となります。このような医療情勢で整形外科医の果たす役割は益々高まることと思いますし、多くの病院で整形外科診療が求められています。

整形外科治療は保存療法と外科的治療からなります。消化器内科と消化器外科、脳外科と神経内科のように競合する科がないことも大きな特徴で、運動器を総合的に管理するのが整形外科医です。治療対象は骨折などの外傷、スポーツ障害、脊椎疾患、関節リウマチなどの炎症性関節疾患、また変形性関節症のように加齢に伴う退行性変性疾患など、対象とする疾患は多岐にわたります。

治療の醍醐味は、歩行が困難な患者さんが手術により疼痛が消失して、自由に歩行が可能となったり、変形が矯正され外見が改善されたり、患者さんの喜びを共有することができることです。手術は医師の創意工夫により、さらなる治療成績の改善が得られることも大きな魅力です。自分の手で患者さんを治し、生活の質を向上させることができるのが整形外科医の喜びでしょう。

整形外科は国際交流の最も盛んな診療科の一つです。アジア、ヨーロッパそしてアメリカなどで臨床あるいは基礎学会が開催され、外国の医師と交流が行われていますので、大きな視点を持って整形外科学を習得していただきたいと考えております。また、日本の整形外科医の特筆すべき点としては基礎研究を自ら行う機会があることです。是非基礎研究に従事して、広い視野で病気を考えて頂きたいと思います。先生方がこれから素晴らしい整形外科医となられることを期待しております。


「入局する」メリットとは?

前医局長 小林 直実

このページをご覧になられている研修医の先生をはじめ、これからの入局先や今後の進路を考えられている先生方は、今後のご自分の進まれるべき道について多かれ少なかれ不安を抱えていることと思います。「大学の医局に入局する」ということは一昔前ではそれほど特別なことではありませんでしたが(少なくとも私たちのころでは特別なことではありませんでした)、最近では入局せずに直接自分で病院を探して就職したり、後期研修医という選択肢を選んだりと将来の選択肢が多彩になっています。これはこれでよいことなのだと思います。それぞれが主体性をもって選択し、納得して進む道なのですから、もちろん責任は自分にありますし、どのような道であれ得るものは多いでしょう。「大学の医局に入局する」ということもそのような多くの選択肢の一つであるわけですから、昔のように周囲の流れに乗って入局(もちろん私だって当時いろいろ考えて決めましたが・・・)するという時代ではありません。ですから、不安を抱えるのは当然ですし、よく検討することが大切なのだと思います。

では、「大学の医局に入局する」メリットとは何でしょう?当然、大きな組織に所属するということは何かしらの制約が生じるわけですし、デメリットや、面倒くさいことだってあるかもしれません。しかしながら、それでもやはり「入局する」のにはそれ相応のメリットがあるからであって、ただ単に何となく、流れに乗って・・・ではないはずです。第一に、充実した関連施設において整形外科全般について幅広く経験することができること、そして大学病院をはじめ神奈川県内の基幹病院では高度に専門化した最新の治療や難易度の高い手術手技などについて学ぶことができるということです。この両者を複数の領域について、同一の施設だけで学ぶことは容易ではありません。第二に臨床技術のみではなく、学術的な部分、すなわち研究をしたり論文を書いたりといったこと、について学び経験することができるということです。これは好き嫌い、向き不向きがあるかもしれません。もちろん、強要すべきものではないとは言うまでもありませんが、少なくとも一度は経験すべきことなのではないかと思います。好きであろうとなかろうと、一度は自分で研究に携わり、論文を書いたり、学会で発表したりといったことを経験し、そういった世界があることを知ることは医師として決して無駄ではないはずです。そして、もしそのような学術的なことが少しでも面白いと感じたり、もう少し調べてみたい・・・と思ったのであれば、これはもう大学という環境が存分に生かされるはずです。人によっては将来海外で留学をしてみたいと考えている先生がいるかもしれません。医局に属することによって、少なからずそのような海外留学のチャンスも増えると思います。そのような希望を持たれている先生を私たちは全力でサポートします。そしてもちろん臨床においてもある程度経験を得た後に、自分が極めたい専門分野というものが見つかったのであれば、あるいはこれから見つけたいと思うのであれば、大学病院や基幹病院において、それぞれの分野で第一線のスペシャリストのもとで存分に勉強できるわけです。実際に私たちは今、このような専門領域におけるスペシャリストの育成ということを最優先事項として考えています。そして、実際にスペシャリスト育成プロジェクトを立ち上げつつあります。将来の目指す形は人それぞれです。スペシャリストを目指したい人、研究をがんばりたい人、留学してみたい人、いろいろな手術を習得して第一線で働きたい人、地域医療に貢献したい人など・・・ 私たちはいずれの道もできる限りバックアップしたいと思います。このような環境に身を置くことは先生方にとって余りあるメリットとはなり得ませんか?

少しでも私たちの医局に興味があるようでしたら、是非一度遊びにいらして下さい。いろいろな大学出身の先生が多いですから、他大学出身とかそういうことは一切気にする必要はありません。大歓迎です。そして私たちの医局、大学病院の雰囲気を肌で感じてください。その上で先生方の将来の選択肢の一つに私たちの医局が入るのであれば幸いであります。

 

医局制度再考

(医局長blogより抜粋)

人事について

 医局人事というものがある。アメリカなどでは存在し得ない日本独特のシステム。医局制度についてなにかといろいろ言われる問題の、恐らくは根幹をなす部分であると思う。「先生、来年度からはどこどこ病院だから。よろしく~」 簡単に言えばこういうことである。が、実際にこんなに簡単に済ませられるものではない。全ての医局員が納得する人事を組むことは至難の業である。不公平感を多少なりともに感じる場合もあるだろう。個人の実績、実力で病院を選び、就職し、当然給与も実力によって異なるアメリカのようなスタイルをよしとして、そのような道を選ぶ人も最近は増えているのかもしれない。もしくは「民間医局」なるものを通して就職する道も増えているらしい。医局を離れたり、最初から所属しない道を選択する医師はこの医局人事に対しての不満、不安感が最大の要因になっているのだろう。

何はともあれ、大学医局として取り組むべきことは納得のいかない不条理な人事を極力減らし、個人のモチベーション、専門性、ニーズ、バランスを考慮した人事を考えることである。特に、いかに専門性を高め、生かし、高いモチベーションを維持していくか。最も重要なテーマである。

 

 

地域医療について

一般的に医局制度が肯定される大きな要素として、地域医療への貢献というものがよく聞かれる。実際、近年の医局制度の崩壊(実際に崩壊と呼ばれるほどの事態を私は感じていないが)に伴い、多かれ少なかれ地域医療、特に地方における病院は弊害を受けているものと思われる。実際には「先生、来年度からはどこどこ病院だから。よろしく~」がないと勤務する医師が確保できない病院はたくさんあるのである。しかし、大学医局としては人がいなくては派遣したくてもできないのが現実だ。

ある病院に医師をチームとしてバランスよく派遣(すなわち部長、2番手、中堅、若手といったように)したい場合、このようなことは大学医局が個々の経験、実力、専門性を十分に把握しているからこそ可能である。病院が個人個人を雇用しようとしてまとまりあるチームを形成するのは容易ではないだろう。内科ならともかく、外科、整形外科などチームで手術などを行わなければならない科では重要な問題である。

 

教育、研修について

後期研修医という枠を採用する病院が増えている。初期研修2年の後、さらに3年間自分で選んだ病院で研修を積むというわけである。その後は? どこかまた自分で探すわけである。もしかすると、その病院に引き続き就職することができるかも、である。自分の気に入った病院に長く勤められるのであればストレスも少なく、縛られるものもなくいいかもしれない。症例が豊富で、よい指導医の元であれば素晴らしい研修がつめるかもしれない。しかし、どんなに優れた指導医でも得意不得意、専門分野というものがある。特に専門医取得前の若い時期は様々な指導医のもと、幅広い研修を行うことも重要ではないか。少なくともこの点において大学医局、関連病院を幅広くローテートすることはマイナスにはならないはずである。大学医局としては研修に偏りがでないよう、また学会発表や論文作成の機会を与えることも重要な仕事である。研究会や研修会、セミナーなどを積極的に企画していくことも大学医局が存在意義を高める要素であろう。

 

研究について

 医局に属していて、特に大学病院に勤務している場合の最大のメリットだと思う。もちろん個人で(医局に属さず)市中病院に勤務していたって臨床研究はいくらでも可能である(実際そうしている尊敬すべき医師もいる)、が、実際にはなかなか難しいのではないだろうか?日々の忙しすぎる臨床業務、限られた時間、限られた予算、マンパワー、自分一人でできることは限られている。

豊富(とは言えないかもしれないが・・・)な研究費、マンパワー、先進医療などの最新で高度な技術、医局として長年積み重ねている膨大なデータや経験・・・こういったものを最大限享受できるのが、医局に属している大きなメリットである。学会をみれば一目瞭然であるが多くの優れた研究はやはり大学医局(もちろん関連病院を含めて)主導のものが多い。

 

学位取得、留学など

 学位取得、こればっかりは大学がだすものである以上、どこかの医局に属していないとほとんど不可能なものである。もっとも、学位を必要とするか否かは各個人の考えによるものであり、必要のない人にとってはどうでもいい問題かもしれない。

 留学についてだが、個人的に留学する手はいくらでもあるし、実際そのようにしてがんばっている先生もいる。タイミングの点で言えば医局に属していなかれば自分の思うタイミングで行け、期間も思うようにできる点で有利かもしれない。しかし、近年の留学事情はなかなか厳しいものがあり、実際には研究員を受け入れる(有給で!)余裕のある研究室は年々減少している。ここで大切なことは、無給で受け入れてくれる病院や研究室は見つかっても、ちゃんと給料がもらえて雇用してくれる研究室を自分で見つけるのはなかなか難しいという点である。大学と研究室の代々続いている関係や、教授をはじめとする様々な人脈により、そのような道は見つけやすいというのは事実だと思う。

 

診療について

研究と共通する点が多く、リンクしている。大学を中心に高度な医療を実践し、研究をフィードバックする。たとえ関連病院に勤務していたとしても、最新の情報や技術について様々な機会を通じて知ることができる。また実際に患者を紹介したり、時には医師を招聘して手術を行う。希望すれば他病院での手術を見学し、学ぶこともできる。大きな組織に属しているからこそ可能である。もちろんこれらのことは個人で病院に就職していても可能ではあるが、限界がある、と思う。大学病院と関連病院の連携、病診連携などもお互い顔を知っている医局、同門という繋がりがあるからこそ円滑に運ぶ。

一方で患者側からしてみれば担当医が毎年のようにころころ変わるのは望ましくない。人事に関連してくるが、この点は医局制度の問題の一つかもしれない。

 

緩やかな繋がり

教授がよく口にされる言葉である。要は医局員という一人一人の医師、人と人とが組織として「緩やかに繋がっている」ということである。大げさにいうと「絆」である。そして日本人ならではの義理人情、みたいなものもある(と思う)。30年、40年と続く医師生活のなかで多くの先輩、同僚、後輩と出会うことになる。

180名近い人間がある程度まとまるには、当然、それなりの約束事、がある。改めて言わなくても何となく分かっている協定、みたいなものである。ここがアメリカなどでは到底存続し得ない理由かもしれない。合理性を追求すれば、とてもあいまいで不合理なものなのかもしれない。そう考える人は最初から医局になど属さない方がいいだろう。

さきにでた「民間医局」なるものについてだが、医局という単語を使用しているが似て非なるもの。当たり前だが、万人もいて人とひとの繋がりなどあろうはずもないし、もちろんはなからそんなものを目的としているわけではない。ただのリクルート仲介である。ただ条件のよい(実際いいかどうかは行ってみなきゃ分からないが)病院を探すだけならとても合理的であろう。

 

前教授が入局する医師によく言っていた言葉がある。「医局ってのは、部活動みてなものだからよ・・・」  そう、部活動みたいなものなのである。

通常、この「繋がり」というものは、たとえ開業などで医局を離れることになっても、同門として繋がっているわけである。部活でいうところのOB会みたいなものである。先にも述べたが、病診連携もこの繋がりがあるからこそ円滑にすすむ。

 

これからの医局

 従来の「医局制度」が何かしらネガティブなイメージなのは、やはりその不透明性によるところが大きいのだろう。医局員でさえ、大学医局がどうなっているのか、どうしたいのか、はたからみて不透明な部分は少なからずあるようである。これからの医局は透明性を少しでも上げる努力が求められる。

 透明性をあげて、とりあえず何をどうやってどう決めているのか分かったとして、何も意見を言えないのでは意味がない。改善してほしいと思う部分、個人的な要望であってもあらゆる世代が発言できるシステム、環境が必要であると思う。全ての意見や要望を実現させることは困難かもしれない。しかし、何はともあれ声を聞く、ということ自体が重要なのではないだろうか。それと同時に医局側からも、メッセージを発することも必要ではないか。要は相互コミュニケーションである。医局においてこのコミュニケーションというものは最も大切にしなくてはいけないと思う。

 

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